2021年12月7日(火)飯塚市議会で「一般質問」に立たれた吉松信之議員に聞きました。
吉松議員は12月の一般質問で「防災について」質問されていましたが、このテーマを選んだ理由を教えてください。
私は65歳のときに地元の推薦から青天の霹靂で議員になったんですが、その前は飯塚消防署の署長を務めていました。また、自然災害に対しての知識を深めるため51歳のときに気象予報士という資格もとりましたので、自然災害やまちの防災については知識と経験があります。いままで培ってきた経験や知識を飯塚市の「防災対策」に役立てたいという思いを強く持っています。
ということは、吉松議員は災害の専門家ということですね。
そうです。飯塚市民のために行政の防災対策をしっかりと正す使命が私にはあると思っています。なので、当選以来「一般質問」で何度も「防災」をテーマに質問をしてきました。
今回の「防災について」の一般質問は、「停電」について詳しく質問しました。「防災について」確認しなければならないことは山程ありますが、一般質問は時間が限られているので、その都度テーマを絞って聞いています。
皆様も記憶に新しいと思いますが、令和元年に上陸した台風15号は日本各地に甚大な被害をもたらしました。中でもその台風が原因で起こった停電は8万世帯におよび、日常生活や経済活動に大きな影響を与えたと言われています。
停電になったときの大変さを想像してみてください。現代の電気に頼り切った生活では想像もできない不便な暮らしに直面することでしょう。冷蔵庫が切れ、家電が使えなくなり、テレビやスマホも使えなくなるのです。中でも深刻なのが「水道」です。トイレなどの生活用水やお風呂、飲料水など命に関わるライフラインともいえる「水道」が、地震のあとの停電によって止まってしまう恐れがあります。
この「水道」については飯塚市では今年の4月から水料金の値上げが決定していることから、市民の皆様も気になる点だと思います。水道管の老朽化の進行と施設の耐震化の遅れから水道料金の改定が決まっていますが、市民に負担をお願いする以上、災害による停電時の水道確保など、しっかり対策はされているのか、市としての考えを示す必要があると考えます。また訓練については先日、鯰田協同浄水場で行われた災害訓練について、成果や今度の見通しなど私なりの要望も含め質問しました。
鯰田浄水場で行われた災害訓練について教えてください。
昨年の10月5日、鯰田共同浄水場にて非常用発電機の試運転が行われました。今回の試運転は、災害等による電力停止時において鯰田共同浄水場の供給エリアの方々に給水を確保することができるかどうかを試したものです。現在飯塚市は、株式会社アクティオと「災害時における資機材供給に関する協定書」を交わしていますが、非常時には非常用発電機をリースして、予め施設に設置した接続盤からの電力供給による浄水場の稼働を可能にします。今回の訓練の結果、電力停止から4時間で発電機を接続し電力供給が可能になることが分かりました。
もともと鯰田共同浄水場では電気が止まってから12時間は家庭に供給される仕様になっているので、4時間で発電機を設置出来たことは喜ばしい事だと思います。この方法だと施設に発電機を常設するのに比べコストも抑えられるので市内8箇所ある浄水場で直ちに行えるように進めてもらいたいと思っています。
しかし、停電時に非常用発電機のリースで対処するためには、予め施設に接続盤を設置する必要があり、その接続盤の設置はまだ鯰田共同浄水場1箇所に過ぎません。市からは年に2箇所のペースでこの接続盤設置を進めるとの答弁でしたが、コストが抑えられるのなら年に2箇所といわず、3箇所4箇所と前倒しで行っていただきたいと強く要望したところです。
質問内で登場した「電気自動車の公用車」について教えて下さい。
公用車の電気自動車化については以前から質問内で発言してきました。福岡市や北九州市ではすでに公用車の電気自動車化は進んでいます。2020年には経済産業省も災害時に電気自動車を非常用電源として使用することを推奨する「災害時における電動車の活用促進マニュアル」を公表しました。(※1)
2019年の大風15号の際には、停電が長引く千葉県内の被災地に自動車メーカー各社が電動車を派遣。携帯電話の充電をはじめ、エアコン、扇風機、冷蔵庫、洗濯機、夜間照明、地下水水汲み上げポンプなどへの電力供給を行い、被災生活の負担軽減に大いに役立った実績もあります。
この電気自動車を公用車として使用することで、普段は公用車、災害時は非常用電源として活用することができるのです。福岡市は160台以上の導入を行い、避難所に電気自動車から電気を供給できる機器の設置を停電対策として行っています。自動車会社から自治体への無償貸与の話題も連日のように発表され、各自治体で次々と自動車会社との連携・協定を発表しているのを見た方も多いことでしょう。(※2)飯塚市でもぜひ公用車に電気自動車の導入を検討していただきたいと考えています。
最後に、飯塚消防署の署長として長年現場にいた経験から災害に対して最も必要なものを教えて下さい。
「災害などそうそう自分には起きないだろう」という考え、この正常バイアスが最も危険です。災害に備えるには、普段の生活、日常の中でいかに災害を自分事としてイメージできるかが大切になってきます。旧筑穂町の内野地区と山口地区では麹(こうじ)で作ったものを口にしない「麹絶ち」という風習があります。これは今から100年以上前、江戸時代に両地区で起きた大火災を2度と起こすまいと、今日まで続く風習です。当時の大火災により飢えと渇きに苦しんだその経験を忘れないため、その大変さを忘れないために1年に1日、麹で作られた味噌や醤油、お酒、酢などの食品をいっさい口にしない日を定めているのです。
例えば「電気断ち」。1時間でもいいんです。電気が無いときの苦労を体験して肌で感じてみませんか?電気が無ければどれだけ困るか。理屈ではなく実体験で感じてみると、災害対策に取り組む意識や姿勢がきっと変わってくると思います。行政は「自助・公助・共助」という言葉を使います。市民ひとりひとりが防災への意識を高め日頃の生活の中からできることをしっかりと備えておく。そして公助として行政ができる備えや災害時の動きについては、議員という立場でしっかりと目を光らせていきたいと思います。
「防災について」まだまだ飯塚市として足りないところや出来ることは沢山あります。これからも一般質問を通じてどんどん課題を明らかにし、必要な政策は実現できるよう頑張っていきたいと思います!
吉松信之議員、今回はインタビューにご協力いただきありがとうございました。
(※1)【災害時における電動車の活用促進マニュアル】経済産業省公式HPより
(※2)【災害時電源EV活用八女市、日産など5社と協定】読売新聞オンラインより
飯塚市議会 令和3年第6回定例会(12月議会一般質問)吉松信之議員
飯塚市議会議員 吉松信之
協働環境委員会(副委員長)
議会運営委員会委員
飯塚地区消防組合議員
決算特別委員会委員
議員さんは多面的な視野から的確な指摘・提案を行なわければならない中で、防災のスペシャリストがメンバーにいることは市民として大変心強いです。吉松議員は防災のみならず、過疎化地域や教職員のワークバランス、観光資源に対しても行動しており勝手ながら注目しております。
未対策で被害が生じた場合、できる範囲で対策して被害が生じた場合だと、結果が大きく違ってくることは素人でも容易に想像できます。結果的に何ともなかった=対策を施した結果、ライフラインへの影響を最小限に抑えることができたということ=理想形と考えます。
水害や地震など、これまで市はマクロな対策を講じてきたと思います。2021年の市長政策では災害に強いまちづくりを掲げています。市のプランに対してプロ目線から低コスト・高パフォーマンスの防災対策が最適化され、地域に実装されること=本当に災害に強いまちづくりの実現を願っています。