満場一致のパラドックス
更新日:2022年7月29日
満場一致とは、会議に参加する全員の意見が一致したときに起こる現象です。満場一致のパラドックスとは、全員の答えが一致しているのに、その答えが正しいとは限らないということを意味します。或いは、日本人が得意な雰囲気や空気感で集団思考が働き、個人の意思とは別に全員一致の状況が作られていく兆候をいいます。
皆の意思が同じ方向を向いていて、一見とても気持ちの良い響きがあります。しかしながら、ビジネスや会議において、満場一致こそ疑いを持たねばならない場合があるのです。
かの有名な経営学者ピーター・ドラッガーは
成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、
もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。
という言葉を残しているほどです。アメリカの元大統領であるリンカーンやルーズベルトは意思決定を行うにあたり、先の未来を熟考/理解を深めるために敢えて意見の不一致を生じさせていました。
満場一致、あるいは全会一致のパラドックスは全ての質疑において適用されるものではありません。ケースバイケースです。適用できる状況の多くはプロセスの複雑さや曖昧さを含んでいる場合です。
例えば、以下の質問に答えてみましょう。
「いちごはどれですか?」

全員が一番左を差しますよね。これはシンプルかつはっきりとした問いであるため、満場一致のパラドックスは適用外となります。次のパターンに移ります。
例えば、次に例を挙げます。
複数のテレビ番組や新聞で、専門家っぽいコメンテーターや評論家たちが、
新型コロナの予防にはスクワット100回が効きます
と言っていたとしましょう。そんな中、とある村の会議である提案が出されました。
「新型コロナ予防のためにこの村民は全員、毎日スクワット100回すべきと思うのですがいかがでしょうか?」
全員賛成の満場一致で可決になりました。
テレビを見ていない人は、そんなアホなことあってたまるか、と思うでしょう。実際、スクワット100回でコロナ予防できるなら、世界はとっくにコロナ危機から脱しています。
しかし、都合の良い情報のみ集めてしまう確証バイアスなどの認知バイアスが働いたとき、どう考えてもおかしいと思えることであっても、周囲の空気やバイアスがかかった状態では多数のグループ意見に寄せられてしまうことがあります。人間はコンピュータと異なり、先入観や偏見などのバイアスがかかった状態で判断を行っているからです。
少人数のグループに分けてディスカッションする、批判歓迎のムードを作る、というのは誰もが経験してきた討論の形と思います。これは自発的に発言すること以外に、全体として正しいディスカッションの下、最も適した判断ができるかどうかの要素も含まれています。
議会を見ると全員賛成、反対という形は少ないように思えます。
なんでみんな賛成(反対)しないんだよ。なんでいつも意見分かれるんだよ
と思う市民もいることでしょう。ですが、これはしっかりと個人が意思表明できていることを示しており、多数決でバラけている状態はむしろ議会として健全と言えるでしょう。
議会においてどういう考えをもって賛成(反対)したのかを示さず、他人事のように賛成派/反対に流される、或いは議題に関わらず派閥で意見を左右する人は、
市の利益<個人の利益
の思考になっています。議員という仕事は向いてない可能性が高いため、応援している方であっても、そういうところはちゃんと見て、選挙で投票しましょうね。