議案61号財産の取得(移動式観覧席)の可決について、YouTubeでこの議論を聴いた視聴者としての感想
議案61号財産の取得(移動式観覧席)の可決について、YouTubeで一連の議論を聴いた身としての感想を書き綴っていきたい。当然、市民の総意ではなく、飽くまで一個人の感想である点は予めご了承いただきたい。
経緯の説明
いま鯰田に建設中の新総合体育館に、移動式の椅子を取得して納入しようという案件です。504脚で金額は7,843万円。1脚あたり約15万5,000円です。本体工事は2年前に入札があり、今現在建設中で来春には出来上がる予定です。そこに納品しようという移動式観覧席なんですが、もともとこの移動式観覧席は本体工事に入っていました。それがいつのまにか外されて、部品納入ということになり、今回議案として上がってきたということです。物品納入で事務用品として入札をすると、事務用品の入札参加業者さんは、29社ありますがそのうち13社を飯塚市は指名しました。指名した理由は29社中13社は事務用家具を扱ってるという理由です。その13社で5月に入札を行いましたが、その13社中の10社が辞退し、3社が残りました。今回の討論ではその選定方法や経緯に不安が残るとして6人の議員が反対討論を、そして2人の議員が賛成討論を行いました。
結果
賛成議員 坂平末雄 光根正宣 奥山亮一 土居幸則 田中武春 上野伸五 田中裕二 吉田健一 田中博文 鯉川信二 守光博正 瀬戸光 古本俊克 佐藤清和 道祖満 反対議員 川上直喜 金子加代 兼本芳雄 永末雄大 深町善文 江口徹 小幡俊之 福永隆一 平山悟 松延隆俊 吉松信之 城丸秀髙 議案61号財産の取得(移動式観覧席)に 賛成15 対 反対12 よって、原案可決
入札参加企業及び落札企業
落札会社グッドイナフ(株)
落札金額71,300,000円
入札日2022/05/19
残った3社
(株)S・Y / グッドイナフ(株) / (株)福岡ソフトウェアセンター
参加会社13社
(株)S・Y / グッドイナフ(株) / (株)サンテック / (株)三和通商 / (株)玉置 / (株)ツシマ / (株)信田文苑堂 / (株)福岡ソフトウェアセンター / 合資会社丸大商店 / (有)ユーアイ事務機 / (株)麻生情報システム / (有)小川商事 / (株)トータルオフィス
感想はここから
まずはじめに、本音ベースで思ったことをざっくりとまとめると、
移動式観覧席はアリだと思っている。初めて移動式観覧席を見たとき、なんて便利なものなのだろうかと感動すら覚えた経験がある。
談合事例で反省したと思いきや、次は問題視されないようもっとうまくやろうという負の気概を感じ取れてしまったところ。
誰の税金か考えて、透明性のある仕事をしてほしい。
というところだ。
そういえば移動式観覧席って、自分の出身校にもあったなと思いながら一連の議論を聴いた。移動式観覧席って、実物見た人は分かると思うが、専門知識のある方が安全な設置から電源管理等の面倒、運用指導まで行う必要があるほどの大型設備だと思っている。
設置をミスったら人命に関わるほど危険なものなのだが、飯塚市は事務用品とした。事務用品ということは鉛筆と同等の扱いってことか?このカテゴライズは極めて謎である。いや、自分の事務用品の認識が間違えているかもしれないから調べてみよう。

自分の認識は百科事典と同じことを確認した。飯塚市や賛成議員の考える”事務用品”の定義はどうなっているのだろう。もはや実寸大ガンダムやロケットまで事務用品になりそうな勢いなので聞いてみたい。勘定項目を事務用品にするなら、課税取引における仕入税額控除を狙ったのだろうか。入札条件を絞るためにそうしたのだろうか。この辺、言った言わないの子供のような答弁をせず、ちゃんと理屈で説明すべきだろう。
……
…
移動式観覧席の導入で議論がある、という言葉だけだと必要か・不要かの討論かと思いきや、多くはその選考過程に対して疑問を呈した内容、というより、これマズいから一旦再考した方が良いとチャンスを与えているように見えた。移動式観覧席はあっていい。だけど選考プロセスは見直すべき、ということが共通項と理解した。
議員さんの賛成・反対意見を聞いて、気になった点は以下の3点だ。
入札で平等です感を出しているが、違和感を覚える点(これは入札3件の企業について)
市議会議員は市民を代表する市の監視役なのに、一部の市議会議員と市長は自身の利益優先に一生懸命になっていると想像させられる点
本音はどうだか知らないが、市が自信満々で問題ないと断言する点
まず1について。
入札で平等です感を出しているが、違和感を覚える点(これは入札3件の企業について)
大前提として、これは市の事業であって、税金を使ってどうやって良いまちを作っていこうか、というものである。公共事業の原資は税金だ。
画像をクリックすると、市が公開している入札(見積)結果及び経過を見れます。HPからは以下のツリーから確認できます。
ホーム > 産業・ビジネス > 入札・契約 > 入札結果 > 入札結果(契約課) > 令和4年度 > 物品・役務(郵便入札) > 指名競争入札分
商取引には取引条件というものがある。よくある「納品月末締め翌月末現金振り込み」という条件を例にしよう。例えば、業者が6月に納品・検収したら、発注者である市は7月末に現金を業者の指定口座に振り込むというものである。
ここで疑問に思った方もいるだろう。最終三社に残った会社さんの中には、業者⇔市の取引以前の、製造メーカー⇔業者の取引契約を締結できるか微妙な会社さんもいるということだ。
落札業者はメーカーに発注し、メーカーは落札業者に商品を卸す。これが基本だ。ただ、取引を行うにあたっては「信用」というものがこの世界にはあり、多くの企業は(株)帝国データバンクなどから仕入れる会社の成績表を見て、取引するか、または取引条件を厳しく見定めるのである。取引実績が無かったら断られるし、取引できても支払い条件が厳しい=着手金や先払いを行うことが多い。(なぜ?って思うかもしれないが、利益を追求する民間企業にとってリスク回避は当然なのである。)
今回の8,000万円弱の金額となると受注生産型ということは容易に想像できる上、落札業者のキャッシュフローは大丈夫なのか?という懸念が生じる。余計な心配は無用なほどキャッシュが潤沢であれば資金面の問題はないだろうが、議員の指摘のように過去の取引額からしてケタ違いに大きな取引になっていて、ここは市が敏感にならないといけない部分だろう。
勿論、上記の直取引が全てではない。取引リスクを回避するために商社を利用する手段がある。この場合、市からの受注者が商社を介してメーカーに発注をかける。商社がメーカーと取引を行い、企業のリスクを一部背負う形をとって納品を行うというものである。この方法を選択する場合、市からの受注業者は商社へのマージンが発生する。それが金額の5%であれば、マージン分は7,843万×5%=約392万円となる。ちなみに直取引なら不要な金額だ。
また、もし移動式観覧席のメーカー卸値と受注金額の差額に大きな乖離(粗利)が生じている場合、理由が何なのかは説明が必要だろう。税金なのだから。
説明する義務が無いのであれば当然ブラックボックス化される訳だが、今回入札に参加した会社でたとえ受注を逃したとしても、その中で卸売機能を有する会社が商流に参画している場合は失注しても利益を享受することが可能になる。
民間企業同士の取引でかつ契約書内容に抵触しないのであれば、それも戦術のうちとして評価に値するのかもしれない(取引相手が納得するかどうかは別として)。税金を使う場合はどうだろうか?詳しいことは分からないが、みんなのお金で買うものに対して、一部の者だけが利益を享受する仕組みになっていたとしたら市民は納得するだろうか?
そのように想像を働かせると、どうにも腑に落ちないのである。地元の企業にお金を回したい気持ちは理解できる。それが公平かどうかがポイントだろう。市民の賛同を得たいのであれば、商流やお金の流れを含めてはっきりさせるべきと思う。
2について。
市議会議員は市民を代表する市の監視役なのに、一部の市議会議員と市長は自身の利益優先に一生懸命になっていると想像させられる点
そもそも一般競争入札じゃなくて、指名競争入札方式をとっている地点でどうかと思っている。地方自治法92条の2に「当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない」とあり、そのギリギリを攻めるために指名競争入札方式&事務用品扱いが効いてくるのは違うだろうか。
それはさておき取締役に就いている会社の経営状況は分からないが、多くの会社が存在する中で市長と議員の関係する会社(3社中2社)が選考を通過したことに疑問が残る。出来レースと思われても仕方のない結果である。役員報酬が無くて無報酬かもしれないけれど、個人の利益・面子を優先したと思われるのではないだろうか。
3社中2社が市長・議員に絡んでおり、そうなると受注した残り1社が目立つ。もしレースの勝利確率を高めるのならば3社ともどこが受注しても良いように間接的に関わらせるのがゲーム上有効な戦略だが、実際のところどうなのだろうか。憶測でものごとを発することは極めて良くないことと理解しているが、市民からの信頼を得る面ではクリアにした方が良いだろう。
一連の討論を見た結果、議員28名がいる中で賛成15名と反対12名に分かれたことには正直驚いた。正式なプロセスを踏んでおりルールに沿っているから、何もおかしいことはない。ということだろう。本気でそう思っているのだろうか。
何はともあれ、可決されたということだ。市民がどう思おうが関係なくこの結果が全てである。
議会は賛成多数で可決した。
この言葉に含まれるのは、果たして希望か、それとも失望か。
委員会での答弁内容に不正が見当たらなかったり、入札行為のフレーム上は問題ないことは確かにその通りなのだろう。表面上のロジックはOKである。よって中身もOKとイコールにできるかと言えば、そこは別に考えないといけないと思っている。
飯塚市の入札とは市長と議員が関係する会社のためにある、と言われても仕方がないのではないか。乱暴ではあるが、公募条件に”市長や議員に直接又は間接的に利益享受可能な関係の会社は除く”などstrictな条件を一文追記す案が出てきてもおかしくない状況にあるように思える。市長や議員がお金持ちになったり、大きな資産を得たりすることは何も問題ないと思うが、現職を全うしたいならば、斯様な公共事業の入札案件で疑問を抱かせる行動は控えるべきだし、そちらを重視するならベクトルが市民に向いていない以上、現職をやめて会社を興して自力で稼げばよい。
3について。
本音はどうだか知らないが、市が自信満々で問題ないと断言する点
市が自信満々に問題ないと断言できたのはなぜだろうかと考える。各社の背景、事業内容、BS、PL、CFを見た上で判断したのだろうか?反対議員の言葉を聞くに、「さすがにこれはマズいから、考え直した方がいいぞ」と最大のチャンスを貰っていたのに多数の議員と市側は振り切ったようにしか見えなかった。
仮に”そうだよね、これは良くないね”なんて言える状況ではないことは何となく察しているつもりだ。発言の責任は個人に問われそうだし、議事録にも残るし、その後の成績にも響くだろうから。それでも市と議会の役割上、再考するに値するならば”見直す勇気”こそが市民のため、市のためだろう。
一方、有力10社が辞退した。理由は取り扱いが無いこと、納期に間に合わないこととある。後者について市はヤバイと思わなかったのだろうか。相応の納期がかかるのであれば受注生産型で納品すると理解できる。そうであればメーカー工数は仕様でも変わらない限り発注者による納期変動なんて差ほど変わらないだろう。なぜそれで期日までに納品できる会社とそうでない会社が出てくるのだろうか。公示した納品期限はどうやって決めたのだろうか。もし仮に仕様決めの段階で入札会社が介入していたとすると、この茶番に付き合わされた10社は時間を奪われた損失(人件費等)が発生する上、それこそ官製談合に抵触しかねないのでは?と思ってしまう。この件は議会の議論を聴くと誰もが「えっ?」となる内容であるし、社会人であれば想像が及ばない訳はないと思っている。
現状設計されているルール、制度というものは得てして不完全なものであり、状況に応じて変化していくものと認識している。今後、市民に対して協力を仰いだり信頼を得たりしたいとき、一筋縄ではいかないと頭を抱えることも多いだろう。その根本はどこにあるのか改めて考えて欲しいものだ。
最後に、後々揉めたくなかったり不信を払拭したいならば、HPなどで議会の内容以外の部分をちゃんと説明した方が良いと思う。
(感想終わり)
勉強不足故に、間違った認識をしている可能性は多分にあると思う。そうだとすると認識を正すし、自身の考えの発信を臆さないことへの一助になれればと考えている。
以上が議会を視聴した感想である。